TPC FM-AConnect CTI について
本稿では、Amazon Connect と FileMaker WebDirect 19 を連携させた CTI(Computer Telephony Integration)プロトタイプ・TPC FM-AConnect CTI の仕組みと機能をご紹介します。
Amazon Connect は、AWS上で構築するクラウドベースの PBX/コールセンターシステムです。レガシーPBXを使用したコールセンターシステムに比べ、初期費用に抑えてシステムを構築できます。
これによりオフィス内のスタッフはもちろん、テレワーカー(在宅勤務者)でもCTIを利用できるようになります。
TPC FM-AConnect CTIの主要機能
- FileMaker WebDirect 19のアプリ(FM-AConnect WD)を使用した着信時顧客情報ポップアップ(着信した電話番号により顧客データベースを検索し、その顧客情報をオペレータのPC画面に表示する機能)
- FileMaker DB に登録された電話番号とオペレータIDに基づく、オペレータへの配信(着信番号別オペレータ割当、例えば顧客DBで顧客AとAを担当するオペレータXが紐付けて登録されている場合、Aの電話番号を着信するとXに転送する
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チャット ― テキストによるチャット
- 通話記録 ― 音声通話を記録・再生する機能
WebDirect とは FileMaker で作成したアプリをそのままWeb公開する機能です。FileMaker のデスクトップアプリと高い互換性を有しており、そのほとんどの動作をWebブラウザ上で再現可能です。また、バックエンドとなるデータベースには FileMaker に限らず、ODBC経由で Oracle、MySQL、SQL Server、DB2*1、PostgreSQL*1 を使用することができ、他の開発ツールに比べ短い時間で CTI のフロントエンドを開発することが可能です*2。
Amazon Connect の電話端末となるソフトフォン・CCP もブラウザで動作する Webアプリであるため、WebDirect との親和性、JavaScript による相互の制御性は高いといえます。
注:
*1 DB2、PostgreSQL を使用するには、Actual社の ESSアダプタが必要。
仕組みと Amazon Connect の問い合わせフローについて
以下が TPC FM-AConnect CTI のシステム構成図となります。
図でCCP (Contact Control Panel)とあるのが Amazon が提供するソフトフォンで、Windows/Mac の Firefox あるいは Chrome 上で動作します。残念ながら、スマホやタブレット、SIPフォンには対応していません。
顧客からの電話が入ると、まず Amazon Connect が1つ目のCCPに電話を転送し、転送先の CCP はPCのスピーカーから呼び出し音を発生させます。
上記の処理の流れは Amazon Connect の問い合わせフローによって制御されます。
問い合わせフローとは、問い合わせの一連の処理の流れをシナリオ化したものです。
TPC FM-AConnect CTI には、以下の 3 つの主要問い合わせフローによって構成されています。
問い合わせフローとは、問い合わせの一連の処理の流れをシナリオ化したものです。
TPC FM-AConnect CTI には、以下の 3 つの主要問い合わせフローによって構成されています。
メインフロー
窓口となる Amazon Connect の問い合わせフローです。顧客からの着信が音声通話要求なのか、チャット要求なのかによって各サブフローを呼び出します。
上記の流れを簡易フローチャート化すると、以下のようになります。
サブフロー:音声通話応答用問い合わせフロー
メインフローにより、音声通話要求と判断された場合に実行される Amazon Connect の問い合わせフローです。通話着信があってからCCPでの通話が開始されるまでの問い合わせフローは次のようになります。
上図は1画面に表示するため、エラー時のフロー転送とハングアップを増やしてます |
このとき FM-AConnect WD は着信した電話番号を取得し、その番号によりデータベースを検索し、顧客情報をポップアップ表示します。
上図を補足解説します。
- ログ収集開始では、Amazon Kinesis Stream というデータストリームを有効にし、通話開始時のタイムスタンプを取得します。このタイムスタンプは、Amazon S3 に保存される通話記録ファイル(後述)名をデータベースに保存するために必要となります。なお、Transcribe(AWSの音声→テキスト変換モジュール)を利用する場合も、この Kinesis が必要となります。
- Amazon Connect のオペレーション時間設定を使用し、会社の営業時間を設定します。営業時間内であれば次に進み、時間外であれば顧客にその旨を告げる音声アナウンスを行い、通話を終了します。
- AWS の Lambda 関数に定義されている FileMaker Data API により、着信電話番号に該当する顧客担当者(担当エージェント)を検索し、通話要求を担当者の CCP に転送を試みます。以下は、転送時の分岐処理。
- 顧客担当者検出 --- その担当者に通話要求を送信
- 顧客担当者を検出したが不在 --- 通話可能な担当者に通話要求を送信
- 顧客担当者未検出(DBに登録無) --- 通話可能な担当者に通話要求を送信
- 顧客担当者不在 --- 未達メッセージを自動音声アナウンス → 通話終了
- AWS の Lambda 関数を使用し、受信した電話番号をJSON形式でWebクライアント(ここでは FM-AConnect WD)に渡します。FileMakerのファイルには「電話番号による顧客検索スクリプト」を用意し、電話番号は引数で渡せるようにしてあります。
Webサーバ上に配置するHTMLページには 上記のCCP を埋め込んでおき、Lambda が生成したJSON形式の電話番号を取得し、Webビューアに設定してある FileMaker.PerformScript (電話番号で顧客検索スクリプト, 電話番号) を実行します。
この FileMaker.PerformScript( ) は FileMaker 19 で導入された新機能で、Webビューア内の JavaScript から FileMaker のスクリプトを実行できます。これにより、CCPに着信があると、FileMaker WebDirect のアプリで顧客情報が検索されるようになります。
CCP(右)に着信すると、WebDirect(左)は自動的に電話番号で顧客を検索・表示する - 担当者の CCP まで通話要求が転送されると、CCP が呼び出し状態となり、✓ボタンをクリックすると通話が開始されます。
以下の動画では、上記のフローに基づき実装したCTIの着信時顧客情報ポップアップ機能をご覧いただけます。
通話記録再生機能について
通話記録は音声ファイルとして AWS S3 サーバに保存されます。通話記録ファイルは FileMaker WebDirect アプリケーションの「交信履歴」タブのリストから再生することができます。
サブフロー:チャット応答用問い合わせフロー
TPC FM-AConnect CTI にはチャット機能も用意されています。チャット機能のシステム構成図は以下のようになります。
メインフローにより、チャット要求と判断された場合に実行される Amazon Connect の問い合わせフローです。チャット要求があってから CCPでのチャットが開始されるまでの問い合わせフローは次のようになります。
メインフローにより、チャット要求と判断された場合に実行される Amazon Connect の問い合わせフローです。チャット要求があってから CCPでのチャットが開始されるまでの問い合わせフローは次のようになります。
上図は1画面に表示するため、エラー時のフロー転送とハングアップを増やしている |
上図を簡易フローチャートにすると以下のようになります。
上図を補足解説します。
- 貴社のWeb サイトにチャット開始用のページを用意し、顧客はこのページからチャットを開始します。
顧客の上図の"Start Chat"をクリックするとチャット用の API Gateway にアクセスが行われ、Lambda 関数によりチャットセッションが開始し、Amazon Connect のチャット応答用問い合わせフローに入ります。 - Amazon Connect のオペレーション時間設定を使用し、営業時間をチェックします。時間内であれば次に進み、時間外であれば顧客にテキストでアナウンスを行い、チャットを終了します。
- 切断フローとは、エージェント側がチャットを終了したときの処理を定義したフローです。たとえば、チャットのお礼メッセージ、顧客への案内メッセージ、企業プロモーション情報などを送信したり、Amazon Connect の内部処理などを定義したりできます。
- 担当エージェントの CCP が呼び出し状態となりますので、✓をクリックするとチャットが開始されます。
- チャットが終了すると、上記の 3. の切断フローが実行されます。たとえば、以下のようなメッセージが顧客側に表示されます。
Amazon Connect でシステムを構築するのは上記のようにそれなりの工数が発生しますが、ハードウエアの初期費用が不要で、運用コストも廉価です。また、システム構成もハードウェアを気にすることなく柔軟に変更することが可能です。
コロナ等の感染症や台風・洪水などの自然災害が多発する昨今、オペレータの居場所に拘束されない Amazon Connect の導入は今後増えるものと予想されます。
以上
関連URL
- WebDirect 16 ワーカマシン構成による500+スレッド 同時接続テスト (2017/06/14 投稿)
- WebDirect は 16 で実用段階に近づくか? ― JMeter による WebDirect 14/15/16 比較(2017/05/24 投稿)
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