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2022-01-24

正月休み明け、仮想マシン上の FileMaker Server 5.5 バックアップが失敗していた

 正月休み明け、Windows 2012 Hyper-V上のWindows 2008 で FileMaker Server 5.5(FMS) を運用している取引先から、「バックアップが失敗している」との連絡がありました。
仮想マシンの構成は以下の通りです。

■Windows 2008仮想マシン(VM)構成
[C:内臓VHD]
[E:内臓VHD]←FMSを実行
[F:外付VHD]←FMSのバックアップ先

 上記Fドライブの特定ディレクトリはReadできるのに、他のディレクトリはReadできず、Writeは全くできないという状況で、図の「I/Oデバイスエラーが発生したため、要求を実行できませんでした。」が出ます。


 そこでFドライブ(外付ディスク)にハード的問題があると思い、このドライブを取り外して別のPCに取り付けてチェックすると、普通にマウントできて、Read/Writeできました。


 気を取り直して、Hyper-V機に同じ外付けドライブを戻してもらい、Hyper-Vマネージャーで問題のVHDを一度取り外して、再度アタッチ。 これによりRead/Writeも、FMSバックアップも実行できるようになりました。

“削除”ボタンで問題のVHDを取り外し、“参照”ボタンで同VHDを再度アタッチ


 休みの前後、取引先でHyper-V機を落とすとき、外付けHDDの電源On/Offの順番を間違ったのが原因かもしれません。

 マシンを落とすときは外付けHDDを最後にOFF、起動するときは外付HDDを最初にON。


(NuckyT)

2021-07-24

まだまだいける FileMaker 5.5/6 ― レガシーFileMaker の延命 2021 ―

 FileMaker 5.5/6 の発売は今から約20年前ですが、巷ではまだまだ使用している会社も多いです。 今回は レガシーFileMaker のサーバとクライアントのOSの互換性に関して、当社の運用実績、検証、推測を基にレポートします。また、レガシーの修正や改変の際に必要となる分析方法についても記します。

※Windows 11 は 64bit マシン専用OSですが、通常は Windows 32bit アプリケーション も運用可能です。 アプリケーションによっては障害が発生する可能性がありますが、32bit アプリである FileMaker Pro 5.5/6 も Windows 11 にインストールし、起動することができます。 2021年10月現在、トラブル無く運用できています。 今後、運用時間を延ばし、本稿にて状況をレポートする予定です。


FileMaker の最強3トップ

注:
  • レガシーFileMakerのOSとの互換性/延命に関するご意見等は、コメント欄にご投稿ください。
  • 本稿に基づき読者がシステムを構築された場合に問題や障害等が発生しても、当社では責任を負いません

FileMaker Server 5.5とWindows OSとの互換性 

 下表はFileMaker Server 5.5(以下、FMS)と Windows OS との互換性を示します。

Windows  OS 互換性 備考
2000 Server FileMaker社による動作保証
2003  当社等の運用実績に基づく[1]
2008 当社等の運用実績に基づく[1]
2012 当社等の運用実績に基づく[2]
2016 当社検証に基づく、非推奨[3]
2019 ? 未検証[4]
     
2000 Pro FileMaker社による動作保証
XP ? 未検証[5]
7 ? 未検証[5]
10 × 当社検証に基づく、非推奨[6]
[1]:「当社他の運用実績」は、当社及び当社顧客の運用実績有
[2]: 運用可。但、FMS管理コンソールでクラッシュするケースあり、以下の「仮想マシン上で FMSを運用する場合」参照
[3]: DB公開はできるがFMS管理コンソールでクラッシュする、非推奨
[4]: 2019はWindows10系である為、公開はできるがFMS管理コンソールでクラッシュすると推定、非推奨
[5]: System7はWindows 2000 Pro(公式サポートOS)に近いため運用できる可能性有、検証の価値有
[6]: FMS管理コンソールでDBを公開できる時とできない時があり非常に不安定、非推奨

FileMaker Pro 5.5/6 とWindows OSの互換性

 下表はFileMaker Pro 5.5/6(以下、FMP)と Windows OS との互換性を示します。
表中、サーバOSが含まれていますが、これはリモートデスクトップサービスを使用し、マルチユーザライセンスのFMPを複数ユーザで使用することを想定しています。

Windows  OS 互換性 備考
2000 Pro/Server FileMaker社による動作保証
2003  当社等の運用実績に基づく[1]
2008 当社等の運用実績に基づく[1]
2012 当社等の運用実績に基づく[1]
2016 当社等の運用実績に基づく[1]
2019 未検証[2]
     
XP FileMaker社による動作保証
7 当社等の運用実績に基づく[1]
10 当社等の運用実績に基づく[1]
11 2021年10月現在テスト中。経過は順調[3]
[1]:「当社他の運用実績」は、当社及び当社顧客の運用実績有
[2]: 2019はWindows10系である為、運用可能と推定
[3]: 2021年10月現在Hyper-VにWindows11を搭載しテスト中。適時本ページで経過をレポート予定。

新設するサーバ機とOSとの互換性(仮想マシン不使用)

 サーバ機の老朽化によるマシン本体のリプレースについて考えます。この時、仮想マシンを使用せずに、新サーバ(物理マシン)に Windows 2000/2003/2008/2012 をインストールし、このOS上で FMS を運用しようとする場合、物理マシンが各OSをサポートしているか否かはチェックポイントとなります。経験上、メーカーが公式対応していないOSであっても動作する可能性は高いですが、メーカーが公式対応を謳っているマシンであれば、それに越したことはありません。

Dellサーバ機のOS互換性

HPサーバ機のサーバOS互換性

仮想マシン上で FMSを運用する場合

次に仮想サーバ上での FMSの運用について考えます。この方法では仮想マシンにWindows 2000/2003/2008/2012 をインストールして、FMS を運用します。
 既に仮想環境を構築済みであれば、マシン調達に伴う金銭的コストを負わなくても済むので、担当者の心理的負担は少ないです(経験者談)。逆にFMSだけのために仮想環境を新たに導入するとなると、コスト大の上、担当の心理的負担も大となります(同談)。

 注意点が一つあります。当方で遭遇した現象ですが、Dell PowerEdge T105 のハイパーバイザ上の仮想マシン(Windows Server 2012R2 )では、 FMS5.5 が問題なく動作していましたが、PowerEdge R330 のハイパーバイザ上の仮想マシン(Windows Server 2012R2 )に FMS5.5 を新規インストールした後にFMS の コンソールで「ファイルメーカー Server」を右クリックして「プロパティ」を選択するとコンソールがクラッシュする、ということがありました。 この時、正常稼働している PowerEdge T105 上 の仮想ディスク(VHD)を丸ごと PowerEdge R330 にコピーして仮想マシンを再構成したところ、コンソールで「プロパティ」を選択することができました。
 このように、一見同じに見えるシステム環境であっれも、FMSで障害が発生することがある、と言う事です。
 
 当社ではFileMakerレガシーの延命を多くうけたまわっており、現在までほぼ成功裡に終わっていますが、リスクがあることをユーザに十分理解頂き、業務を進行することがやはり大切です。
 もっとも、最新のテクノロジーでシステムを構築する!、と言っても、既存システムとの互換性、開発失敗リスク、最新テクノロジー故の不安定性・未成熟性といったリスクもあります。また、ベンダーが勝手に契約条件を変更する近年のサブスクリプションというビジネスモデルも大きなリスクです。

 5G、AI、機械学習、IoT/M2M、DXを行わない企業に未来はない!などと、漠然としたIT用語や根拠不明の言説が巷に溢れる中、現行仕様で満足している、或いは現行仕様を修正・拡張しながら利用できれば十分というシステムも普通にあるわけで、であればレガシーシステムの延命は十分考慮に値すると思います。


Windows Server の Windows Update 

 Windows update を行わなければ FileMaker Server 5.5(FMS) が動作しないということはありませんが、Windows 2008/2012 などの古いOSを運用する際に重要なことなので、本項にて触れておきます。

 通常、新たにサーバ機を購入したり、サーバOSをインストールした際は、Windows update を行い、OS を最新の状態にします。これは以下の理由によります。
  1. セキュリティ上の要請
  2. 運用開始後の Update のリスクを低減する
    運用開始後に Windows update を実施すると、何らかの障害が発生し、運用中のソフトウェアが動作しなくなる可能性があります。できるだけ導入・テストの段階で利用可能な全ての update を当て、運用後のダウンタイムを減らしましょう。
  3. Windows Server がある程度最新の状態でないと動作しないプログラムがある
    ある種のアプリケーションをインストールする際、一定のバージョン以上の Internet Explorer や .NET Framework を要求され、インストールを実行できない、ということはままあります。この一定のバージョンに辿り着くまで、何回か Windows update を行う必要があることがあります。導入時に最新のUpdateを当てておけば、運用後にこれらの作業を低減することができます。
  4. Windows Update 自体が動作しなくなることがある
    後述のように Windows Update エージェントが古いと Update 自体ができないことがあります。

Windows update ができない時 

 FileMaker Server 5.5 と互換性の高い Windows Server 2008/2012 ですが、これらのOS のインストール直後に Windows update を実行すると、 0x80072efe というエラーが発生して、Windows Update が完了しないことがあります。
 このエラーは Windows Update エージェント自体に問題あり、Windows Update エージェントのアップデートプログラムを単独でダウンロードし、これを実行することにより解決できます。

 ※ご利用の Windows Server のバージョンに適合したものをダウンロード後、インストールしてください。

 この他にも、いくつかのアップデートを実行できないこともあります。その場合は Windows Update の順番を変えてみたり、個別にアップデートプログラムをダウンロードしたりして対応する必要が出てきます。

 以上、運用開始後のダウンタイムを低減するために、導入段階で Windows Update をできるだけ進め、OSを最新の状態にしておきましょう。

Windows Server のライフサイクル

 参考までに、Windows Server のライフサイクルの表(2021/07/26時点)を挙げておきます。
Windows  OS サポート終了日 延長サポート終了日
Windows Server 2003 2010/07/13 2015/07/14
Windows Server 2003R2 2010/07/13 2015/07/14
Windows Server 2008 2015/01/13 2020/01/14
Windows Server 2008 R2 2015/01/13 2020/01/14
Windows Server 2012 2018/10/09 2023/10/10
Windows Server 2012 R2 2018/10/09 2023/10/10
Windows Server 2016 2022/01/11 2027/01/12
Windows Server 2019 2024/01/09 2029/01/09

実行速度とテストについて

 物理マシン或いは仮想マシンを問わず、構築した新環境に於ける実行速度が旧環境のそれに比べて明らかに遅い場合、問題となります。 旧環境から新環境への移行業務の早い段階で、必要十分な実行速度が得られているかをユーザに判断してもらうべきです。 業務終了間際に実行速度が遅すぎると判明すると、行った作業が全て無駄になる可能性があります。

 当社では実行速度の可否を判断する際、約12万件の郵便番号情報が入った郵便番号.fp5 のファイルをFMSで公開し、FMPからアクセスして住所フィールド(都道府県+市区町村+町域を1つに結合したフィールド)のソートを行います。 この12万レコードのソートが30~40秒程度で終了する、というのを一応の合格基準としています。
注:
これは未ソートの状態で新たににソートした場合の基準です。一旦ソートされた状態で再度ソートすると、ソート時間が30~40%改善するとがあります。このため、ソートテストは常にソートされていない状態で実行してください。

 ユーザは実行速度には敏感ですので、旧環境と新環境で郵便番号をソートのデモを行うのも良い考えだと思います。

 当方の経験上、コア数やメモリも増やしても、実行速度はほとんど改善されません。ただ、ネットワーク(NIC)の設定を変更することにより、劇的に改善することがあります。これについては、こちらを参照してください。

レガシーFileMaker の分析

 当社では第三者が開発したレガシーFileMakerの保守・開発を引き受けていますが、そのシステムを拝見するとデータベースの正規化が無視されていたり、同種のスクリプトを延々と繰り返していたり(コードの再利用という考えがない)、逆にスクリプトが意味不明に細かく分割されていたり、セキュリティが考慮されていなかったりと、掟破りのシステムを目にすることが少なくありません。

 掟破りシステムに障害があると、当社担当が分析・修正するとなるとなります。熟練開発者が書いたスクリプトでも、その開発者の支援無しに第三者がデバッグするのは元々困難な作業です。 これが非熟練者により開発されたものとなると、通常の十倍からそれ以上の工数を要する大変な作業となります。 このような状況では、スクラッチ開発(一から再開発)お勧めしたいのですが、膨れ上がった掟破りシステムをスクラッチ開発するには、多くの時間と費用を要するため、当社担当がデバッグすることになります。

 さて、このような悲惨な状況下での頼みの綱がデバッガや分析ツールですが、旧FileMaker にも FileMaker Developer 5.5/6 (以下、Developer)という製品があり、これによりデバッグや分析を行うことができます。
 Developerを使うと、下図のようなデータベースデザインレポート(実体は FileMakerのファイル)を作成することができます。 このレポートはシステムの開発量(フィールド、レイアウト、スクリプト等の数)を知るのに有用です。



 一方、検索機能が不十分、というか無いに等しいので、保守や障害対応で特定のオブジェクトの検索を行うには、データベースデザインレポートは不適です。
 例えば、システムの改変時にフィールドAに対して何らかの変更を加える場合、そのフィールドが影響を及ぼすオブジェクト(他のフィールド、スクリプト、レイアウト、値一覧、リレーション)が無いかをリストアップし、それぞれ検討を行い、悪影響があると判断される場合には対応が必要になります。この時、上記のデータベースデザインレポートには、フィールドAを指定して、関連するオブジェクトを抽出する機能がありません。
 この種の検索機能が無いと膨大な作業を人力で行う事になりますが、これは実務上ほぼ不可能となります。このため当社ではオブジェクト検索を行う以下のサブシステムを用意しています。
 

 図の「TPC Database Analyzer」は FileMaker 5.5/6用データベース分析ツールです。[検索条件]に「売上日」と入力して検索を実行すると、[売上日]を含むオブジェクトがすべて検索されます。その検索結果が下図です。


 画面左を見るとレコード数が約3万1千ありますが、これがこのシステムを構成するオブジェクトの数です。該当件数が299となっていますが、これが[売上日]が関連するオブジェクトの数です。約3万1千あるオブジェクトから人力で[売上日]を含むオブジェクトをしらみつぶしに調べるのは、実務上ほぼ不可能ですが、299件であれば一つ一つチェックしていければ、時間はかかると思いますが、熟練の開発者であれば必要な修正を加えることが可能です。

 このような分析ツールは障害や部分改変を行う際に限らず、新システムのスクラッチ開発時に旧システムを分析する際にも非常に有用なツールとなります。
(本項は21/10/14に加筆)
 
(NuckyT)




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2016-05-23

今なお輝くFileMaker 5.5/6

FileMaker 5.5/6の環境を新サーバへ早急に移行する必要がある方へ

FileMakerのWindows OSとの互換性や注意点などをこちらの記事にまとめました。
(2021/07/25 NuckyT)

 今なお輝くFileMaker  5.5/6! その理由は以下の通りです。

1. OS上位互換性

当社の経験上、FileMaker Pro 5.5/6(以下、FM5.5/6) は最新の Windows OS ― Windows 7/8/8.1/10で、FileMaker Server 5.5(以下、FMS5.5) は Windows Server 2008/2008R2/2012/2012R2 で動作します。また、FMP5.5/6 のマルチユーザライセンスを Windows Server のリモートデスクトップサーバ上に配置すれば、遠隔地からでも FMS5.5にアクセスして快適にFMを使用できます。
当社の取引先では、2台の Widnows Server 2008 を2008年に導入し、1台に FMS5.5 を、もう1台(Remote Desktop サービスライセンス×10ユーザ付)に FMP5.5(マルチユーザライセンス) をインストール。2016年5月現在、20ユーザがこのシステムを利用しています。
ちなみに、FM5.5のリリースが2001年。最終のアップデートがリリースされてから約15年が経過した2016年現在でも最新のOS上で普通に動作する FileMaker 5.5/6 は驚異的ですらあります。
(追記:2020年3月現在稼働中)

注:
  •  2019年3月現在、当方及び取引先の Windows 10 機で FMP 5.5/6 が起動・動作することを確認しています。
  • 当社ではブログのコメントにより寄せられるレガシー FileMaker の動作情報を歓迎致します。それらの情報は参考にさせて頂き、当ブログに反映させて頂くことがあります(19/3/13追記)。
  • FMS5.5 は環境によっては問題が起こることもあります。当方で遭遇した現象としては、Dell PowerEdge T105 のハイパーバイザ上の仮想マシン(Windows Server 2012R2 )では、 FMS5.5 は問題なく動作していましたが、PowerEdge R330 のハイパーバイザ上の仮想マシン(Windows Server 2012R2 )に FMS5.5 を新規インストールした後にFMS の コンソールで「ファイルメーカー Server」を右クリックして「プロパティ」を選択するとコンソールがクラッシュする、ということがありました。 この時、正常稼働している PowerEdge T105 上 の仮想ディスク(VHD)を丸ごと PowerEdge R330 にコピーして仮想マシンを再構成したところ、コンソールで「プロパティ」を選択することができました。R330 上に新規インストールした FMS5.5 を動かすべくいろいろ試してみましたが成功せず。 本現象は両PowerEdge のビデオドライバの差異に起因するものかと疑っています。
Windows 10 上の FMP5.5 によりデータベースを起動


2. 低コスト性


これが第二の理由です。 どの位、システムの総コスト(TCO)が安いのか、FileMaker 15 の FLT との比較で試算した結果が下記です。
  • FMP5.5@¥35000× 20ライセンス+FMS5.5 ¥130,000×1台=¥830,000
  • FileMaker 15 FLT 20ユーザライセンス)@¥285,000×15年=¥4,275,000

何と FM5.5のコスト は FLTのそれに比し、 5分の1以下。これまた、驚異的です。今後、Windows 10 と Windows Server 2016でも安定運用できそうな予感が…。 そうなるともう10年はかるーく生き残りそうです。

[19/03/17追記]
2019年3月現在、当社環境では Windows 10 上の FMP5.5/6 により開発・運用を行っています。また、複数の取引先に納品した FMP5.5/6 及び FMS5.5 によるシステムが、Windows 10 を含む新しいOS上で稼働しています。 仮想マシンや P2V、Remote Desktop を使用すれば、今後10年以上、レガシーFileMaker によるシステムは運用可能と思われます。


3.高速性


最新の FileMaker は最新のマシンで起動させてもかなりモッサリ。 一方、FMP5.5/6 を最新のマシンで起動させた時の速いことと言ったら… お暇なら古いPCと最新のPCで実行速度を比較してみてください。

FileMaker のOS互換性やFM製品間の互換性、さらにライセンスポリシーも迷走する昨今、機能的には遥かに劣る FM5.5/6 が輝いて見えます。 次回は、そんな  FM5.5/6 のアプリを iOS や Android で利用してみます。


そのアップグレード、ホントに必要?

  FileMaker は Ver5.5/6 以降、様々なアップグレードがなされてきました。
大きいところでは、
  • データベーススキーマの変更(アプリとデータの分離が可能に)
  • イベントによるスクリプトトリガ
  • データベース容量の拡張
  • アカウント機能追加(スクリプトによるアカウントの新規作成・管理)
  • マルチウインドウ対応とウインドウの制御
  • サーバサイドスクリプト
  • PDF出力
  • ESSによるSQLデータソース(RDBMS)との連携
  • WebDirect(FMアプリをそのままWebアプリ化)
  • カスタムWeb機能の充実(XML/PHP/REST対応)
  • iOS対応
  • テーマ・スタイル/タブ機能等レイアウト機能の改善
  • デバッガの改良
が挙げられます。現在、それぞれ重要な機能となっており、大きな恩恵を得ているユーザや開発者も多いでしょう。
一方、巷には、機能的なアップグレードを必要としない、或いはアップグレードが費用対効果に見合わないシステムが数多あります。 たとえば、NTT東日本の「ひかり電話設定サイト」(下図)、このサイトでは電話転送の設定を行うのですが、ここのユーザインタフェイスはこの10年程、ほとんどまったく変化がありません。


また、Googleの運営する Blogger ― 当ブログもこれを利用しています ―、このブログ投稿管理サイトも“ユーザインタフェイス的には十数年、あまり変化がありません。

上記の2サイトは、ユーザサイドから見れば改善の余地がありますが、運営企業は費用対効果が低い」、あるいは「プライオリティが低い」とみなしてか、少なくともユーザインタフェイスのアップグレードにはあまり熱心ではないようです。

かく言う小社も、顧客管理・請求書発行業務は「売上猫くん4.0」という FM4.0 で作成した自社システムを FM5.5 によりアップグレードし、一部簡単な機能を追加した後は、ほぼ20年間そのまま使用しており、今後も使用を続ける予定です。

FileMaker 5.5/6 で現在も稼働する小社の基幹「売上猫くん 4.0」

Amazonの通販サイトや AWS、 YouTube、Google Map、Google Analytics のように持続的なアップグレードが企業競争力と収益の源泉となるようなシステムは星の数ほど存在します。 一方、レガシーシステムであっても十分に役割を果し、今後も大規模なアップグレードを予定しないシステムも多く存在するのです。

本ページは現在でも多くのアクセスがあり、レガシーFMへの関心がいまだに高いことがうかがえます。システムをアップグレードするか、延命するかについては、業者やベンダーの情報を鵜呑みにせず、そのアプリの性質や将来像、費用対効果、双方のリスクを踏まえて意思決定するのがクレバーな企業なのだ、と思うのです。

(19/03/27追記 NuckyT)


(土屋)


追記
些細な変更にすらリスクは伴います。重要なシステムであればあるほど、そのまま使いたい。 アジャイルでリファクタリング…って何? 触らぬ神に祟りなし。
米軍の核兵器運用システムでいまだに8インチフロッピーディスクを使う理由について、ペンタゴンは「…現在も機能しているため」と言っています(米軍、核兵器運用に今も8インチフロッピー使用)。

2020/02/04 追記:
米軍、核ミサイル運用でのフロッピーディスク使用をようやく停止との報道
The US nuclear forces’ Dr. Strangelove-era messaging system finally got rid of its floppy disks (英語)
2019年にフロッピーディスクがようやく廃止されたとのことですが、約50年前のテクノロジーを延命運用できるとは、さすが米軍。


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