2025-06-06

FileMaker Pro 19.0 で作成する表形式レイアウトに要注意!!!

 FileMaker Pro 19.0 表形式レイアウトを作成すると(下図参照)、そのファイル自体に障害が発生します。

上記のように表形式のレイアウトを作成するとファイルに障害が発生する
上記のように表形式のレイアウトを作成するとファイルに障害が発生する


レイアウト作成後にファイル修復コマンドを実行すると、以下のようなエラーが発生します。 

FileMaker Pro 19.0 を使用して、同様の現象が発生するか、確認してみてください。

 このメッセージが表示されたら、文字通り、このファイルを使用し続けることは避けるべきです。
 なお、Recover.log には以下のようなエラーコードが記録されます。

2025-06-03 14:36:03.136 +0900 19v2テストだよ.fmp12 8487 表形式をリセット
2025-06-03 14:36:03.157 +0900 19v2テストだよ.fmp12 8476 この項目は変更されました
2025-06-03 14:36:03.727 +0900 19v2テストだよ.fmp12 0 修復中: テーマカタログ
2025-06-03 14:36:03.743 +0900 19v2テストだよ.fmp12 0 テーマカタログ 順リストを再構築中: 名前
2025-06-03 14:36:03.743 +0900 19v2テストだよ.fmp12 0 修復中: テーマ 'com.filemaker.theme.enlightened' (1)
2025-06-03 14:36:03.774 +0900 19v2テストだよ.fmp12 8476 この項目は変更されました

 

エラーが発生した場合の復旧方法

 上述のエラーが発生した場合、以下の要領でファイルを回復させます。

  1. エラーが発生している表形式レイアウトを削除する。
  2. 削除したレイアウトを手動で復旧。この時、一旦フォーム形式で作成した後、表形式に変更する。 
  3. ファイルを閉じてファイル修復コマンドを実行。下図のように「新しいデータベースの使用は安全ですが...」と表示されていれば障害は解消しています。元のファイル(注:修復したファイルではない)を使用して開発または運用を再開してください。
修復成功時のメッセージ例

 

 長期間運用しているシステムでも要注意 

 本現象は盲点です。長期間運用されているシステムであっても、このエラーが潜伏している可能性があります。 システム管理者の方は、現在運用中のシステムのバックアップを使用して修復コマンドを実行し、上記のエラーが発生していないことを確認しましょう。

注:

  1. FileMaker Pro 19に限らず、後継バージョンの2023/2024 の修復コマンドを使用しても、障害の原因となっているレイアウトを削除しない限り、この障害は解消しません。
  2. 類似のエラーは fp7(FileMaker Pro 7~11のファイルフォーマット)でも発生することがあります。当社では FileMaker Pro 11で類似のエラーを経験しています。
  3. レイアウトを削除して上記のように対処しても、エラーが解消されないことがあります。
  4. 当方の検証では、FileMaker Pro 19.3 以降で新規に表形式のレイアウトを作成してもこの現象は発生しませんでした。Claris社は明言していませんが、このバグをFileMaker Pro 19.3 で解消した可能性があります。


 ファイル障害への対策

  Claris 社は頻繁に FileMaker のアップグレードを行っており、今までは問題なく使えていた機能が突然不具合を起こす可能性もあります。そのため、FileMaker ソリューション開発の際には不測の事態に備え、以下のような対策を行うことをお勧めします。

  • FileMaker Pro 19 環境でデータベースを保守・運用中なら、最低でも FileMaker Pro 19.3 以降にアップグレードしておく 
  • 1週間以上のバックアップ(データを含む)を残す
  • クローンのみ(データ無)のバックアップをできるだけ長期間(例:10週~)、追記的(上書せずに)に保管する
    • クローンにするのはディスク容量を節約するため
    • 上記の方法で復旧できない場合は、クローンを利用して復旧する
    • 当社では週1回クローンバックアップを行い、50週分(約1年分)のクローンを保持
  • そのシステムの重要度に応じて、毎日あるいは週に1回、ファイル修復コマンドを実行し、ファイルにエラーが無いことを確認する


 参考

  FileMaker Pro 19.0 で発生する上記エラー について、Grok に調査させた結果を参考情報として以下に載せておきます。

提供された情報と検索結果(特にWeb ID: 0, 10, 19)に基づき、FileMaker 19.0.2以降で「エラー8487 Reset table view」が解消されたかどうかについて調査しました。以下は結果と分析です。

調査結果

  • エラー8487の詳細: エラー8487は、FileMakerのGet(LastError)関数やスクリプトデバッガで検出されるエラーで、テーブルビューのリセットに関連する問題を示します。具体的には、レイアウトのテーマや構造が破損し、レイアウトが正しく表示されない場合に発生します。このエラーは、FileMaker 19でのレイアウト作成や編集時に頻発し、リカバリログで「Reset table view」として報告されます。
  • FileMaker 19.3.1の既知の問題: Web ID: 10(pkinformation.com)によると、FileMaker 19.3.1ではレイアウトのテーマが意図せずクリアされるバグがあり、レイアウトが破損したように見える問題が報告されています。このバグはエラー8487と関連している可能性がありますが、直接的に「エラー8487」と記載されていないため、推測の域を出ません。
  • FileMaker 19.3.2での修正: 同じ情報源(Web ID: 10)で、FileMaker 19.3.2のリリースノートにおいて、19.3.1で発生した一部のバグが修正されたと記載されています。ただし、エラー8487が具体的に修正されたとは明記されていません。リリースノートを確認する必要があるとされていますが、公開情報からはエラー8487の修正が明確に確認できません。
  • FileMaker 19.6および2023以降: Web ID: 19によると、FileMaker 19.6のサポートは2024年12月19日に終了し、最新バージョン(FileMaker 2023や2024)へのアップグレードが推奨されています。FileMaker 2023以降では、レイアウトやテーマ管理に関する改善(例:新しいスクリプトステップやAPI統合)が導入されていますが、エラー8487の解消に関する直接的な言及はありません(Web ID: 17)。
  • コミュニティ情報: Claris Community(Web ID: 7, 13, 14, 15, 16, 18, 20, 22, 23, 24)へのアクセスが「Loading · Sorry to interrupt · Refresh」エラーで制限されており、具体的なスレッドやユーザー報告を確認できませんでした。そのため、コミュニティ内でエラー8487が19.0.2以降に解消されたという議論があったかどうかは不明です。
  • 他の情報源: Web ID: 0(Claris FileMaker Server Release Notes)やWeb ID: 11(FileMaker Proエラーコード)には、エラー8487に関する具体的な言及がなく、19.0.2以降の修正状況についての情報も見つかりませんでした。Reddit(Web ID: 21)でもエラー8487に関する最近の議論は確認できませんでした。

結論

現時点で、FileMaker 19.0以降(特に19.3.2やそれ以降)でエラー8487が解消されたという明確な情報は、提供された検索結果や公開情報からは確認できません。FileMaker 19.3.1でレイアウトのテーマ破損バグが報告されており、19.3.2で一部修正された可能性はありますが、エラー8487が完全に解消されたかどうかは不明です。

 
Claris Community で見つけた参考記事:

FileMaker 19 Development creating Layout issues. Recovery Reports Error 8487 Reset Table View?

  

 (亀)



2024-04-03

旧FileMaker で開発した受注・送状発行システムを運送会社のEDIに対応させる


  本稿でご紹介の『簡太郎君R3.0は、2024年10月1日にリリースされました。



物流の2024年問題と宅配EDIへの対応

 当社では2009年にFileMaker 11を使用し、受注・請求・宅配送状発行のシステム(簡太郎君)を開発しました。本システムのお客様は運送会社であり、お客様の取引先である数十の農園や農家に配布され稼働しています。ユーザはフルーツ等の農産物の顧客・受注管理、請求書発行、宅配送状の印刷を簡太郎君を使用して行っています。


EDI対応する新簡太郎君のメニュー画面(ブリッヂ社製)― 2024年10月1日リリース済

 さて、運送業界では2024年4月からトラックドライバーに時間外労働の960時間上限規制が適用され、国内の輸送能力が今後不足する可能性が指摘されています。いわゆる物流の2024年問題(全日本トラック協会サイト)です。同サイトによると、労働時間が削減される一方でトラックドライバは不足しており、「営業用トラックの輸送能力が2024年には14.2%さらに2030年には34.1%不足する可能性がある」と記載されています。

 こうした状況で運送業界では、IT技術を使用した業務の効率化(DX)が強く求められており、今回、簡太郎君もEDI対応による業務の効率化を行うこととなりました。

運送EDIシステムの構成

  下図がEDI対応バージョンの新簡太郎君のシステム構成図となります。
 簡太郎君の各ユーザ(農園等)は顧客からの注文を受注画面で入力し、送状を作成・印刷します。ユーザはその日の出荷作業が終わったら、集約サーバに送信します。集約サーバでは多数の顧客から送信されてくる送状データを蓄積・集約しておき、予め設定した時刻になると送状データをまとめて各運送会社に自動送信します。

 集約サーバで一旦データを集約する理由は運送会社の要請によるもので、個々のエンドユーザと契約を締結するのが煩雑で時間がかかるということのほか、エンドユーザのサポートの負担を回避したいということがあると思われます。

簡太郎君の送状データフロー図


簡太郎君のEDI対応

 2009年にリリースされた簡太郎君はFileMaker 11で開発及びランタイム化されているため、FileMakerのライセンスは必要とせず、Windows 10/11でも稼働します。
 農園等のユーザは顧客から注文を受けると、受注画面で依頼主、送り先、商品などの情報を入力した後、送状を作成します。このとき12桁の送状番号が自動生成されされます。荷物が複数の個口に分かれる場合は、送状を個口分作成します。

受注画面の送状タブ

 “送状印刷”または“印”をクリックすると送状が印刷されます。

ヤマト:レーザープリンター用A4マルチ伝票(品番322)

 その日一日の発送が終わった時点で、下図の"EDI送信"ボタンを実行して送状データを集約サーバに送信します。


集約サーバ

 集約サーバは FileMaker Server 2023 により構成されており、Amazon AWS EC2 上に存在します。 このサーバは多数の顧客から送信されてくるデータを常時受信し、蓄積します。
 本サーバにはスケジュールが設定されており、設定された時刻になると送状データをまとめて運送会社に送信します。

 運送会社によりAPIは異なります。本システムではヤマトについてはcURL、JP(日本郵便)についてはSFTPを使用してサーバから各社のEDIサーバにデータを送信します。

 集約サーバで一旦データを集約する理由は運送会社の要請によるものですが、個々のエンドユーザと契約を締結するのが煩雑で時間がかかるということのほか、エンドユーザのサポートが負担になるということがあると思われます。

お問い合わせ

 本システムのお問い合わせは以下のフォームをご利用ください。ブリッヂまたは当社よりご連絡差し上げます。


以上
(NuckyT)

2023-09-21

Quuppa用IPSアプリケーション ― QuickIPS for Quuppa

[English version]


 『QuickIPS for Quuppa』はQuuppa Positioning Engine が提供する位置情報を受信し、PC等の端末上にその位置をリアルタイムで表示する FileMaker で開発されたアプリケーションです。

 本稿では当製品に関して説明します。

Quuppaとは?

 Quuppaは屋内の人やモノの位置情報を提供するためのシステムであり、フィンランドQuuppa Oy社の製品です。同製品は Realtime Location System (RTLS) または Indoor Positioning System (IPS) と呼ばれます。 このシステムでは人・モノにタグ(ビーコン)と呼ばれる発信機を取り付けて、タグが発する信号をもとに人・モノの位置を算出します。GPSと似ていますが、衛星電波の届きにくい屋内での使用に特化し、GPSよりも測位精度が高いのが特長です。また、タグはBLEを使用しているため低電力で長期間の運用が可能です。



Quuppaは主としてタグ、ロケーター、測位エンジン(ソフトウェア)で構成されます。

タグ  

QT1-1 tag
人・モノに取り付け、信号を発信する。ビーコンと呼ばれることもある。
ロケーター

Q35 Locator
タグからの信号を受信して位置測位エンジンに送信。
位置測位エンジン(ソフトウェア)

Quuppa Positioning Engine
ロケーター経由で送られてくるタグ情報を受信、各タグの位置情報を算出してアプリケーションに渡す。要サーバ。


QuickIPS for Quuppa

 Quuppaの位置測位エンジンはタグの位置情報をUDP PushやRESTを介してCSV及びJSONの形式で提供しますが、人・モノの位置をマップ上に表示する等のユーザアプリケーションは導入企業が独自に開発することになります。しかし、このアプリケーションの開発には多くの時間と費用が発生します。この開発作業の工数を削減しするのが当社の QuickIPS for Quuppa です。

主な特長

1. IPS アプリケーションを短時間で導入が可能

 QuickIPS for Quuppa(以下、「QuickIPS」)はタグの所在地をマップ上に表示する「フロアマップ」機能を提供します。 導入は簡単で、フロア画像を取り込み座標を合わせる等の初期設定を行えば、すぐにフロアマップ上にタグの所在地を表示できます。

 QuickIPS により、IPSのシステム導入担当者は、プロジェクトの初期段階でエンドユーザが利用するアプリケーションをイメージすることができます。

2. FileMaker によるカスタマイズ

 QuickIPS は FileMaker で作成されており、開発版も提供される予定です。 FileMaker はローコード開発ツールとして定評があり、開発者は FileMaker により QuickIPS をカスタマイズすることにより短期間で高品質のIPSアプリケーションを開発することが可能です。

3. 多様なフロアマップ開発のツール

 QuickIPSは5種類のフロアマップを提供します。開発版を使用してのカスタマイズに際しては、FileMakerの標準機能に加え、JavaScriptライブラリの plotly(無料) や FileMaker PluginであるxmCHART(有償、サードパーティ製) を使用できます。

3-1. Scatterフロアマップ

 FileMakerの散布図グラフを使用して開発されており、機能は限定的ですが、開発は容易です。

3-2. Object フロアマップ

  FileMakerの機能(主にマージフィールドとスクリプト)を使用して開発されており、Scatterフロアマップに比べて高度な開発が可能です。尚、本フロアマップは他のフロアマップとは異なり、導入時のカスタマイズが必須であるため、開発版の購入が必要となります。

3-3. xmCHARTフロアマップ

 FileMakerプラグインのxmCHART(有償)により開発されており、同製品が提供するFileMake用外部関数使用によるフロアマップの開発が可能です。この外部関数の習得には一定の学習が必要となりますが、チャート作成の柔軟性及び拡張性に優れ、様々なチャートの作成にも利用できます。

3-4. Plotlyフロアマップ

 JavaScriptとJavaScriptライブラリのPlotlyを使用して開発されています。開発者はPlotlyのスキルを必要とされますが、チャート作成の柔軟性及び拡張性に優れ、様々なチャートの作成にも利用できます。

3-5. QuickIPSページ(FileMakerクライアントライセンス非依存)

 上述のフロアマップと異なり、FileMakerクライアントライセンスと必要とせず、ブラウザ上にフロアマップを表示します。同ライセンスが不要のため、多数のユーザがいる環境ではコスト的に有利です。

 但し、運用に際してはFileMaker Serverのライセンスが1つ、設定管理用にFileMaker Proのライセンスが1つが必要です。
 また、python、plotly、Flask、waitress などによるWebサーバの構築も必要となります。


3-6. 開発ツール比較表

 フロアマップは以下の5種類のツールを使用して開発されています。

マップ種類
(開発ツール)

導入時開発

開発難度

拡張性  開発に関する補足
1.Scatter

  • FM標準の散布図グラフを利用
  • Objectに比し簡単

2.Object 必須

  • FM標準のマージフィールドとスクリプトを使用しての開発
  • cm単位の座標はmに丸めている
  • FileMakerによる開発経験要
  • 開発には開発版が必要

3.xmCHART

  • xmCHART(別途購入要)を使用
  • xmCHARTの独自言語
  • FMの外部関数による開発
  • ヒートマップ、トラッキング(動線追跡)等の開発が可能

4.plotly

  • plotly(フリーウェア)とJavaScriptとplotlyを使用
  • ヒートマップ、トラッキング(動線追跡)等の開発が可能

5.QuickIPS pages
  • ブラウザ上で実行
  • 他のマップと異なり、端末毎にFileMakerクライアントライセンスを必要としない
  • JavaScriptとplotlyにより開発
  • 他のマップと比較し低機能
  • 開発難度は一番高い(非ローコード)
  • Webサーバ要

3-7. Picker によるタグ選択

 Pickerにより目的のタグを複数選択し、それらだけをフロアマップに表示することができます。
複数のタグを選択可

 尚、QuickIPSページでは本機能を利用できません。

4. オート、マニュアル、ヒストリの3つのモードに対応

 上記3-1~3-4のフロアマップは以下のモードに対応しています。

オート(AUTO):タグの位置をリアルタイムに自動的に表示
マニュアル(MANUAL):ユーザが更新ボタンをクリックすると、その時点のタグの位置情報を表示
ヒストリ(HISTORY):ユーザの指定により、データベースに保存された過去の位置情報を表示

5. 誤差グラフと誤差集計機能

 静止しているタグの座標を予めタグマスタに登録しておくことにより、実際の座標とQuuppaが算出する座標の誤差をグラフ化または集計表示します。算出座標の精度をチェックしながらロケータの配置を決定する時にご利用ください。


6. 多様なプラットフォーム上で利用可能

 QuickIPSの諸機能は各種プラットフォーム上で動作します。

No 機能 FM Pro FM Go WebDirect Browser 備考
1 環境設定(Conf)  
2 フロアマップ調整  
3 AUTO モード  
4 HISTORYモード  
5 MANUALモード  
6 Scatterフロアマップ  
7 Objectフロアマップ  
8 xmCHARTフロアマップ  
9 Plotlyフロアマップ  
10 QuickIPS page  
11 測位誤差集計  
12 測位誤差グラフ  
13 Picker (タグ選択)  

注:

  • 初期設定及びメンテナンスには、FileMaker Proが必要です。
  • WebDirectはFileMakerで作成した機能をWebブラウザ上で利用できるようにする FileMaker Server の機能です。WebDirectを使用するには、FileMaker Server に加え、ユーザ毎にFileMakerのクライアントライセンスが必要となります。


NuckyT