2019-07-12

iBeacon/Raspberry Pi による室内移動体位置監視モデル 3 ~ 二円指向三点測位の拡張 ~

 前稿では 碁盤目状(正方形型)に配置した Raspberry Pi (以下、端末、と言うことがあります)により iBeacon(以下、ビーコン、と言うことがあります)の信号強度(RSSI)を測定し、「二円指向三点測位」という方法でビーコンの位置を算出しました。

 本稿では前稿の「二円指向三点測位」を拡張し、正方形型に限定されず端末を自由に配置できるようにし、費用対効果(費用対測定精度)を上げ、またシステム導入施設・場所の状況に合わせた端末配置を行えるようにします。

旧版の二円指向三点測位のイメージ


 前稿の二円指向三点測位(以下、旧版、と呼びます)では端末を正方形型に配置し(図1のA~I)、ビーコン(図1のB)のRSSIを測定して端末とビーコン間の距離(=半径)を算出しました。通常の三点測位では3円が重なっていないとエラーとなりますが、本測位モデルでは C1 と C2 (図では E と F)で x 座標を、C1 と C3(図では E と B) で y 座標を算出することにより、ビーコン(B)の位置と推定しました。

図1:二円指向三点測位(旧版)のイメージ
Image of 2 circles-oriented trilateration (old ver)
 なお、旧版の二円指向三点測位については前稿を参照してください。

二円指向三点測位の拡張


 旧版の問題の一つは、端末が常に正方形型に配置されて、位置測定に関わる各端末が水平、及び垂直に存在することを前提にしていた点です。このことは保守及びコスト面の問題につながります。
 そこで今回は端末を柔軟に配置できるように二円指向三点測位を拡張してみました(以後、これを ver01 と呼ぶことがあります)。

ver01のイメージ

 ver01 について説明します。図2は図1の各正方形の中心部に一つずつ端末を追加したものです。13個ある端末(A~M)のうち、ビーコン(B)を最も近距離に感知した端末は、より近距離に感知した順に E(C1)、K(C2)、B(C3)だったとします。

 このとき、C1とC2に着目します(二円指向)。センタ無の正方形型配置のときは、C1 と C2 から x 軸(横軸)のみを算出しましたが、今回は C1 と C2 が垂直に位置しないため、この時点で x 軸を決定してしまうのは抵抗があります。そこで、円C1と円C2の交わった青いエリアをビーコン位置の候補とします。
 次に円C3とその半径により、青いエリア内からビーコンの位置を特定します。円C3が青いエリアまで届いていないため、青いエリア内で円C3に最も近いの地点をビーコンの位置と決定します。
 C1とC2で候補エリアを、C3がそのエリア中から最終座標を決定する、というのが ver01のおおまかなイメージです。
図2: 二円指向三点測位拡張版 ver01

グリッドタイプ

端末の配置型をグリッド、或いはグリッドタイプと呼びます。

図3:グリッドタイプ

Grid type
 
 「正方形+センタ型」は端末の増加を抑えつつ、測位の精度向上を目的とします。例えば、16mの「正方形型」で測位精度が出ない場合、8mグリッドに変更するのは費用的且つメンテ的にも大変なので、各正方形の中心に端末を追加することによって、測位精度向上を図ります。

 「正三角形型」がグリッドはシステム導入場所の形状に合わせて使用します。

 ver01 は「正方形+センタ型」や「正三角形型」に対応しますが、1つのグリッドタイプに限定されず、端末を自由に配置できるように設計されています。
 尚、本稿では、正三角形型は取り扱いません。
 ver01 の計測結果を記す前に、今回行ったテストのシステム構成概要を記しておきます。

システム構成概要

製品名説明
iBeaconAplix社製 MyBeacon® Pro MB004Ac-DR2、50台(補正用固定ビーコンを含む)
Raspberry Pi ZeroW/WH小型コンピュータ、iBeacon が発する信号の受信端末として13台を使用。node.js 参照
SQLite 3データベース、node.js 参照
Python 3開発プラットフォーム、Raspberry Pi がデータベースに記録した情報をもとに、二円指向三点測位を実行するプログラムを開発。
node.js
・開発プラットフォーム、iBeacon からの信号受信、加工、データベースへの書き込みを行うプログラムを開発。本プログラムは Raspberry Pi 上に常駐し、PC等のクライアントのリクエストに応じて上記処理を実行する。
・plotly と連動して Raspberry Pi、ビーコンの位置情報をプロットするプログラムを開発。本プログラムはサーバ上に常駐し、PC等のWebクライアントのリクエスト応じて上記処理を実行する。
plotly node.js 参照
Fabric PC等クライアントから複数の(本テストでは13台の) Raspberry Pi に対して一斉にコマンドを実行するツール。Python によるプログラムあり。 室内移動体位置監視モデルでは多くの Raspberry Pi 端末 に同様の操作を同時に実行することが多いため、この種のソフトが必須。



計測テストの結果


写真1:計測テストの現場
今回は上述のグリッドタイプで「正方形型」と「正方形+センタ型」を対象にして、グリッド幅をそれぞれ 4m、8m、16m、32m* に設定してテスト測定を実施しました。
 「正方形型」については二円指向三点測位の旧版を、「正方形+センタ型」については二円指向三点測位の ver01 を適用しています。
 旧版では 41個のビーコンを、ver 01 では 37個ビーコンを計測対象としています。旧版と ver01 で数が違うのは、ver01では4個を補正用ビーコン(固定ビーコン)として追加使用しているためです。

 下の2つの図がその結果で、ビーコンの実際の座標と計測された座標の誤差に関する値を数値及びグラフで表しています。

 個々のビーコンの実際の位置座標と、計測された座標の誤差(Distance error)は下記の式で算出しています。

Distance error = |actual_x - estimated_x| + |actual_y - estimated_y|

 actual_x, actual y がビーコンの実際の座標、estimated_x, estimated_y がプログラムにより算出された座標です。この値が0であれば、実際の座標と計測された座標が一致していることを示します。個々のビーコンの誤差を求め、その平均値(Error Ave)、最大値(Error Max)、エラー率を表示しています。尚、最小値は旧版、ver01 共に おおよそ 0 となったので、省略しています。

 エラー率(Error rate)は下記の式で求めています。

Error rate = Error Ave / (Grid distance *2)

 この数値は、誤差の平均値をグリッド距離(水平+垂直)で割って誤差率を算出しています。この数値が小さいほど、グリッド距離に比してビーコン位置が良り正しく算出されていることになります。

図4: 旧版/9端末/正方形型で実行時の誤差
Distance errors when using old ver, 9 terminals, square grid + cnter
* 32mグリッドは16mグリッドのデータを転用し、B, D, E, F, H の端末を除外して4つの端末のデータのみを使用して座標を算出しています。

 上図は二円指向三点測位の旧版を使用していることに留意してください。

 誤差率はグリッド幅が広くなるに従い低くなります(改善する)が、32mグリッドでは高くなります(つまり悪化します)。これは今回のテスト環境では、ビーコン信号と端末間の距離が30m位になると、もともと精度が低いRSSIがさら劣化することを示唆しています。

図4: ver01/13端末/正方形型+センタ で実行時の誤差


* 32mグリッドは16mグリッドのデータを転用し、B, D, F, H, J, K, L, M の端末を除外して5つの端末のデータのみを使用して座標を算出しています。


 上図は二円指向三点測位の拡張版 ver01を使用していることに留意してください。

 正方形型と旧版による測位よりも、正方形 + センタ型と ver01 による測位の方が計測精度が向上しています。

 下図は旧版とver01 を比較したグラフです。 


赤線は改善率を示しています。旧版に比し ver01 が 15%~30%超改善していることがわかります。


プロット

今回作成したデータを plotly によりプロットしたファイルを、以下公開します。

二円指向三点測位バージョン
(2COT ver. used)
グリッドタイプ
(Grid type)
グリッドサイズ (Grid size) ダウンロード
 (Download)
旧版(Old) 正方形(Square) 4m × 4m 4mGrid_R9I_old.pdf
旧版(Old) 正方形(Square) 8m × 8m 8mGrid_R9I_old.pdf
旧版(Old) 正方形(Square) 16m × 16m   16mGrid_R9I_old.pdf
旧版(Old) 正方形(Square) 32m × 32m   32mGrid_R9I_old.pdf
ver01 正方形+センタ(Square + center) 4m × 4m 4mGrid_R13c_ver01.pdf
ver01 正方形+センタ(Square + center) 8m × 8m  8mGrid_R13c_ver01.pdf
ver01 正方形+センタ(Square + center) 16m × 16m 16mGrid_R4Ir_ver01.pdf
ver01 正方形+センタ(Square + center) 32m × 32m 32mGrid_R5c_ver01.pdf

以上



(土屋)



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