さて、小社では自社ソフトウェアのユーザ管理用に Microsoft SQL-Server 2000(以下、Ms-sql)とASPをしたシステムを開発し長らく運用してきておりますが、1 年半ほど前にフロントエンド部を Active Server Page から FileMakerに 置き換えた、ということは以前、本Blogでご紹介いたしました。
この前システムは10年以上ユーザ情報と製品サポートの記録用に運用してきましたが、昨年 5 月『売上猫くん Standard R5』をリリースしたのを機に一念発起し、ソフトウェアライセンスのWeb販売機能追加を含め、大幅に機能を拡張することにしました。
開発環境
MS SQL-Server 2000 (同左)MS SQL-Server Management Studio Ver 9 (同左)
FileMaker Pro Server 12 Advanced (FileMaker Pro Server 11 Advanced)
FileMaker Pro 12 Advaned(FileMaker Pro 11 Advanced)
注:( )内は、前回開発時の環境
※なぜいまさらMs-sql 2000なのか?
な ぜ前世紀の遺物の Ms-sql 2000 を使い続けるのか?というと、FM が公式にはサポートしていないSQLデータソースを操作できるのか試してみたい、という好奇心からです。ちなみに、FM12 が公式にサポートしている Ms-sql は2005と2008のみ。 前回、Ms-sql 2000→2008 へのアップグレードは簡単にできることを確認していますので、問題が発生時したらアップグレードするつもりでしたが、現在まで問題なく運用できております。
注:FM13 が公式にサポートしている SQL データソースはこちらになりますが、例によって旧版 SQL データソースはいとも簡単にリストから外されているのであった……
FileMaker 13 でもはやサポートされなくなった IWP をいまさら使う理由は次のとおり。
- PHPに比べ非常に短期間で開発が可能
- 必要最低限の機能で満足できる(JavaScriptなどを使用したゴージャスなインタフェイスは要らない)
- ヘビーなトラフィックが発生しない
- 何かあればサーバを再起動できる程度の余裕がある
※なぜWebDirect(WD)ではないのか?
- ブラウザの互換性が低い(不特定多数がWebアクセスする環境では使えない)
- ハードウェア/ソフトウェアのコスト
ライセンス販売管理システムの仕様
仕様は以下のとおり。No | AP | 機能名 | 内容/仕様 |
1 | FM | カスタマ管理 | カスタマ(顧客)管理、Webログイン用アカウント管理 |
2 | FM | ライセンス管理 | ・複数ライセンス管理(同一カスタマが複数の製品を所有することを想定、メール/葉書等の重複送信を防ぐ) ・入金確認後、Webでカスタマが登録した情報を元に、ユーザ(ライセンス)情報の登録/更新を行う。同時に、製品情報(製品用パスワード)等を登録完了通知メールとして送信 |
3 | FM | メール送信 | ユーザを検索し、対象ユーザにアップグレード等の情報を一括送信。 |
4 | FM | 送信文章管理 | メールで送信する文章を作成。ここで登録した内容をEvaluateし、ユーザ/商品毎の変数を評価(例:本文中に表示する宛名やアカウント情報をユーザ毎に変更する) |
5 | FM | 送信履歴管理 | ユーザ毎にメール/葉書などの送信履歴を保存 |
6 | FM | 葉書 | アドレスが無効または不明でメールが送信されなかったユーザに対し、葉書(表裏面)を印刷する |
7 | FM | サポート管理 | ・サポート期間、インシデント消費状況を管理 ・サポート内容を記録 |
8 | FM | 商品管理 | ・複数商品対応 ・同一商品の複数種類対応(例えば、『売上猫くん Standard R5』には、シングルユーザ版、マルチユーザ版、開発版の3種類がある) ・シリアルNo(ライセンスNo)生成 |
9 | Iwp | ログイン | カスタマ毎に登録してあるアカウント情報をもとに認証 |
10 | Iwp | ユーザ情報更新 | ユーザ情報の登録/更新/チェック |
11 | Iwp | アカウント情報更新 | アカウント/パスワードの登録/更新/チェック |
12 | Iwp | 商品選択・購入 | ・新規購入とアップグレード購入の両方に対応 ・アップグレードというソフトウェア特有の販売形態に関連した各種制御(所有ライセンス数に基づくアップグレード) |
13 | Iwp | 確認メール | 注文確定後、カスタマに対して確認メールを送信 |
注:AP列の「FM」はFileMaker Pro 12/13で、「Iwp」はWebブラウザ がIWPにアクセスして利用するの意。 |
主な画面
FM で本アプリを起動時に表示される初期メニュー。[ClientMode]で「1:IWP」を選択すると、それ以降はブラウザの動作をシミュレート、デバッグはFMで行う。
図1 FileMakerクライアントで表示されるMenu画面 |
カスタマが Web で入力した情報を基に、カスタマ画面上の情報が更新・作成される。
ライセンスの購入・アップグレード履歴は、「購入履歴」タブに表示される。
住所/電話等の情報は変更されうるので、カスタマ側で最新の情報を、購入履歴では購入時点の情報(ピンク部分)を保持する。
図2 FileMaker クライアントで表示されるカスタマ画面 ― 購入履歴タブ |
「サポート履歴」タブでは行ったサポート内容を入力・記録する。尚、このタブを開くと、ライセンス付属のサポートの有効期限を表示したサポート状況ウインドウが表示される。
図3 FileMaker クライアントで表示されるカスタマ画面 ― サポート履歴タブ |
メールの送信文章を入力。[送信内容]はEvaluate()されるので、フィールド名や変数を指定可。
図4 FileMaker クライアントで表示される送信文入力画面 |
今回の開発の肝はソフトウェアライセンスのショッピング機能。
下図はそのまた肝の購入申込画面(FireFox使用時)。
下図はそのまた肝の購入申込画面(FireFox使用時)。
登録ユーザがブラウザを使用しログインすると本画面が表示され、カスタマ情報とともに所有する[現有ライセンス]が画面左下に、その右側にアップグレード可 能な商品情報が表示される。
“カゴへ”をクリックすると、その商品が買い物カゴに入り、「買い物カゴ」タブが表示される。
「新規購入」タブでは(アッ プグレードではない)購入可能な商品が表示される。必要に応じてアカウント情報を含む「お客様情報」欄の情報を更新し、商品を買い物カゴに入れて“確認 画面へ”をクリックすると、FMServerは入力情報をチェックしエラーがなければ確認画面を表示する。
確認画面で“注文を確定する”をクリックする と、FMServerはカスタマ情報を更新するとともに、購入確認メールをユーザに対して送信する。
なお、既存カスタマの場合、アカウント名/パスワードを 変更して“注文を確定する”と即座にデータベースに反映される。
IWP と侮るなかれ。
結構なモノが構築可能なのです。
以上
(土屋)
追記:
ショッピングモジュールに加え、 CRM(Customers Relationship Management)モジュールのユーザサポート機能を公開。詳しくはこちら
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