2014-05-19

FileMaker IWP と SQL-Server 2000 によるソフトハウス用ライセンス販売管理システム

 ユーザに特定のブラウザを強制できない状況、不特定多数のユーザがアクセスする環境では WebDirect を使用できないため、IWP(インスタントWeb)が有用ですが、現状として WebDirect が限られたブラウザのみしかサポートしない状況で、IWP(またはその機能)の提供を打ち切っちゃう FileMaker ってなんなの……。

  さて、小社では自社ソフトウェアのユーザ管理用に Microsoft SQL-Server 2000(以下、Ms-sql)とASPをしたシステムを開発し長らく運用してきておりますが、1 年半ほど前にフロントエンド部を Active Server Page から FileMakerに 置き換えた、ということは以前、本Blogでご紹介いたしました。

 この前システムは10年以上ユーザ情報と製品サポートの記録用に運用してきましたが、昨年 5 月『売上猫くん Standard R5』をリリースしたのを機に一念発起し、ソフトウェアライセンスのWeb販売機能追加を含め、大幅に機能を拡張することにしました。


開発環境

MS SQL-Server 2000 (同左)
MS SQL-Server Management Studio Ver 9 (同左)
FileMaker Pro Server 12 Advanced (FileMaker Pro Server 11 Advanced)
FileMaker Pro 12 Advaned(FileMaker Pro 11 Advanced)
注:( )内は、前回開発時の環境

※なぜいまさらMs-sql 2000なのか?

な ぜ前世紀の遺物の Ms-sql 2000 を使い続けるのか?というと、FM が公式にはサポートしていないSQLデータソースを操作できるのか試してみたい、という好奇心からです。
 ちなみに、FM12 が公式にサポートしている Ms-sql は2005と2008のみ。 前回、Ms-sql 2000→2008 へのアップグレードは簡単にできることを確認していますので、問題が発生時したらアップグレードするつもりでしたが、現在まで問題なく運用できております。

注:FM13 が公式にサポートしている SQL データソースはこちらになりますが、例によって旧版 SQL データソースはいとも簡単にリストから外されているのであった……
 

FileMaker 13 でもはやサポートされなくなった IWP をいまさら使う理由は次のとおり。

  1. PHPに比べ非常に短期間で開発が可能
  2. 必要最低限の機能で満足できる(JavaScriptなどを使用したゴージャスなインタフェイスは要らない)
  3. ヘビーなトラフィックが発生しない
  4. 何かあればサーバを再起動できる程度の余裕がある
上記 1. が IWP 採用の最大のメリットで、今回の開発では30人日程でカットオーバーできました。

※なぜWebDirect(WD)ではないのか?

  1. ブラウザの互換性が低い(不特定多数がWebアクセスする環境では使えない)
  2. ハードウェア/ソフトウェアのコスト
WDは¥100万~数百万の投資が普通にできる企業がイントラネットで利用するってことで。


ライセンス販売管理システムの仕様

仕様は以下のとおり。

No AP 機能名 内容/仕様
1 FM カスタマ管理 カスタマ(顧客)管理、Webログイン用アカウント管理
2 FM ライセンス管理 ・複数ライセンス管理(同一カスタマが複数の製品を所有することを想定、メール/葉書等の重複送信を防ぐ)
・入金確認後、Webでカスタマが登録した情報を元に、ユーザ(ライセンス)情報の登録/更新を行う。同時に、製品情報(製品用パスワード)等を登録完了通知メールとして送信
3 FM メール送信 ユーザを検索し、対象ユーザにアップグレード等の情報を一括送信。
4 FM 送信文章管理 メールで送信する文章を作成。ここで登録した内容をEvaluateし、ユーザ/商品毎の変数を評価(例:本文中に表示する宛名やアカウント情報をユーザ毎に変更する)
5 FM 送信履歴管理 ユーザ毎にメール/葉書などの送信履歴を保存
6 FM 葉書 アドレスが無効または不明でメールが送信されなかったユーザに対し、葉書(表裏面)を印刷する
7 FM サポート管理 ・サポート期間、インシデント消費状況を管理
・サポート内容を記録
8 FM 商品管理 ・複数商品対応
・同一商品の複数種類対応(例えば、『売上猫くん Standard R5』には、シングルユーザ版、マルチユーザ版、開発版の3種類がある)
・シリアルNo(ライセンスNo)生成
9 Iwp ログイン カスタマ毎に登録してあるアカウント情報をもとに認証
10 Iwp ユーザ情報更新 ユーザ情報の登録/更新/チェック
11 Iwp アカウント情報更新 アカウント/パスワードの登録/更新/チェック
12 Iwp 商品選択・購入 ・新規購入とアップグレード購入の両方に対応
・アップグレードというソフトウェア特有の販売形態に関連した各種制御(所有ライセンス数に基づくアップグレード)
13 Iwp 確認メール 注文確定後、カスタマに対して確認メールを送信
注:AP列の「FM」はFileMaker Pro 12/13で、「Iwp」はWebブラウザ がIWPにアクセスして利用するの意。


主な画面

FM で本アプリを起動時に表示される初期メニュー。
 [ClientMode]で「1:IWP」を選択すると、それ以降はブラウザの動作をシミュレート、デバッグはFMで行う。
図1 FileMakerクライアントで表示されるMenu画面


 カスタマが Web で入力した情報を基に、カスタマ画面上の情報が更新・作成される。
 ライセンスの購入・アップグレード履歴は、「購入履歴」タブに表示される。
 住所/電話等の情報は変更されうるので、カスタマ側で最新の情報を、購入履歴では購入時点の情報(ピンク部分)を保持する。

図2 FileMaker クライアントで表示されるカスタマ画面 ― 購入履歴タブ


 「サポート履歴」タブでは行ったサポート内容を入力・記録する。尚、このタブを開くと、ライセンス付属のサポートの有効期限を表示したサポート状況ウインドウが表示される。


図3 FileMaker クライアントで表示されるカスタマ画面 ― サポート履歴タブ


 メールの送信文章を入力。[送信内容]はEvaluate()されるので、フィールド名や変数を指定可。

図4 FileMaker クライアントで表示される送信文入力画面


 今回の開発の肝はソフトウェアライセンスのショッピング機能。
 下図はそのまた肝の購入申込画面(FireFox使用時)。

 登録ユーザがブラウザを使用しログインすると本画面が表示され、カスタマ情報とともに所有する[現有ライセンス]が画面左下に、その右側にアップグレード可 能な商品情報が表示される。
 “カゴへ”をクリックすると、その商品が買い物カゴに入り、「買い物カゴ」タブが表示される。
 「新規購入」タブでは(アッ プグレードではない)購入可能な商品が表示される。必要に応じてアカウント情報を含む「お客様情報」欄の情報を更新し、商品を買い物カゴに入れて“確認 画面へ”をクリックすると、FMServerは入力情報をチェックしエラーがなければ確認画面を表示する。
 確認画面で“注文を確定する”をクリックする と、FMServerはカスタマ情報を更新するとともに、購入確認メールをユーザに対して送信する。
 なお、既存カスタマの場合、アカウント名/パスワードを 変更して“注文を確定する”と即座にデータベースに反映される。
 
図5 ブラウザに表示されるアップグレード・新規申込画面

 IWP と侮るなかれ。
 結構なモノが構築可能なのです。

以上

(土屋)

追記:
ショッピングモジュールに加え、 CRM(Customers Relationship Management)モジュールのユーザサポート機能を公開。詳しくはこちら


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